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2007年に掲載された記事

ナノ触媒で脱臭シート”悪臭除去力180倍”
ナノ触媒で脱臭シート”悪臭除去力180倍” 慶應義塾大学理工学部の白鳥世明准教授とSNT(川崎市幸区、白鳥世明社長、044-580-1566)は、 硫黄化合物を脱臭剤で一般的な炭酸カリウムの約180倍除去できる環境浄化用脱臭シートを開発した。 硫黄系ガスとの酸化分解反応で悪臭物質を効率的に除去する。

触媒の材料費は炭酸カリウムの約2倍。光化学スモッグの原因になる自動車の亜硫酸ガス除去や、 活火山地域の健康被害防止など公害・環境対策から、化学品工場や廃棄物処理場など工業用途まで幅広い活用を見込む。

新開発のシートは、独自のマンガン系「ナノ触媒」を糸状のポリマーに凝集させ、 不織布への加工でも活性を維持することに成功した。活性炭のように吸着物質を再び大気中に放出することがなく、 硫黄系化合物の分解力は光触媒反応の100倍以上。

0.01グラムの触媒を含んだシートによる実験では、人間が感知できる腐敗臭の約2万倍にあたる 20ppm(ppmは100万分の1)のメチルカプタンガス100ミリリットルを、約3分で99.9%除去したという。

シートの加工方法は、数十ナノメートル(ナノは10億分の1)のマンガン系触媒とポリビニルアルコールを、 2万ボルトの電圧で不織布へ糸状に放射してローラーで紡ぐ。 直径100ナノメートルのファイバー状ポリマーに200ナノ―300ナノメートルの触媒を数珠状に形成、 ポリマーに浸透して活性を損ないやすかったマンガン系触媒の課題を克服した。

透明導電性フィルム開発”ホコリの帯電防止”
透明導電性フィルム開発”ホコリの帯電防止” 慶應義塾大学理工学部の白鳥世明准教授の研究チームとSNT(川崎市幸区、白鳥世明社長、044-580-1566)、フジクラの3者は、 常温・常圧下の成膜により、真空スパッタリング法の100分の1以下のコストで製造できる透明導電性フィルムを開発した。 光の透過率は10層構造で60%以上。フィルムへの指圧で電気が流れ、抵抗値を数十キロオームに抑えることで、 ホコリなどの付着原因になる帯電を防止した。駅の券売機などタッチパネル用での製品化を見込む。

携帯端末をはじめ、ゲーム機やカーナビゲーションシステムなど、タッチパネル用透明導電性フィルムの市場は年々拡大しており、低価格化のニーズが高まっている。

SNTはロール式装置で送ったペットフィルムをマイナスのイオン電極を持たせたポリアニリンと、 プラスの電極を持たせたポリアリルアミン塩酸塩の溶液に交互に浸し、各2回のリンス後、乾燥させて成膜する。 これにより、バッチ式スパッタリング装置での成膜と同様の薄膜構造を低コストで実現した。

開発したフィルムは、層を重ねるごとに抵抗値が低下。「80層程度を重ねれば、抵抗が約1キロオームに抑えられ、 発電効率約7%のフレキシブル太陽電池としての活用も想定できる」(白鳥准教授)とし、 タッチパネルをはじめ幅広い用途への活用が期待される。

金属酸化物を”数珠つなぎ”
金属酸化物を”数珠つなぎ” 慶応大学発ベンチャーのSNT(社長・白鳥世明・理工学部助教授、千葉県市川市)は、 化学技術振興機構(JST)の独創モデル化事業において、 ナノ(1ナノは10億分の1)メートルサイズの金属酸化物粒子が数珠状につながった複合繊維と、 その不織布シートを量産する試作機「ナノファイバー・メーカー」=写真=を完成させた。 毎分1平方メートル規模での生産が可能で、空気清浄機のフィルターや車の内装材などへの利用が期待できる。 今後3年間に「シート製造装置(1台当たり約5000万円)で10台程度」(白鳥社長)の販売を見込む。

紫外線を当てると消臭や抗菌など「光触媒」機能を発揮する酸化チタンをはじめ、 ナノ単位の金属酸化物粒子が持つ機能の産業への応用が進んでいる。 通常はナノ粒子を物質表面に塗布して利用するため、剥離した粒子が皮膚から血管内に入ったり、 呼吸などで体内に取り込まれたりすることも考えられるが、人体への影響は分かっていない。

新技術は、金属酸化物粒子と高分子の混合液を空気中にスプレーして繊維化するもので、 「電界紡ぎ(エレクトロスピニング)」と呼ばれる。条件を調整することで、 真珠のネックレスや数珠のように、金属酸化物粒子が高分子によって連続的につながった繊維を作ることに成功した。 また、巻き取り装置を使ってシート状にも加工できる。

繊維に金属酸化物粒子が複合しているためシートなどで使っても剥離が少なく、 またバインダーなどに埋もれてしまう塗布方式と比べ金属酸化物粒子の表面が大きく露出するため触媒効果を上げられる。

酸化チタンの光触媒は空気清浄機のフィルターや衣類、家具などに利用されている。

シリコン系、亜鉛系、マンガン系など数多くの金属酸化物触媒が開発されており、 これらを実用化する際に広く使えそうだ。 また、金属酸化物以外にも、「電界紡ぎ」が機能性粒子の露出面積を増やし、 飛散を減らすことに役立つとみられ、SNTでは他の用途にも拡大していきたい考えだ。

・・・独創モデル化事業・・・大学や公的研究機関などの研究成果に基づき、 研究開発型中堅・中小企業が有する新技術を試作品として具体的な形(モデル化)とする。 JSTでは年度ごとにテーマを公募・選定し、必要な費用(モデル化資金1件当たり2000万〜3000万円程度)を支出。 新たな機能を有する材料、装置など、製品化されれば大きな需要が期待できる技術的な概念や製品構想が対象となる。